成長企業はなぜ「管理部門」に投資するのか? 769名の経営者調査とWewill流・バックオフィス戦略
目次
はじめに
スタートアップの成長を阻む「見えない壁」。
その正体は、組織拡大に追いつかないバックオフィス体制にあるかもしれません。 株式会社Wewillは、10月2日を「意志あるバックオフィスの日」として制定し、スタートアップおよびグロース上場企業の経営者769名を対象に意識調査を実施しました。 その結果、バックオフィスを「コスト」と捉えるか、「投資対象」と捉えるかで、企業の成長フェーズに明確な違いがあることが浮き彫りになりました。本記事では、調査データをもとに、当社代表 杉浦の視点を交えてその実態を読み解きます。
| 調査対象 | スタートアップならびにグロース上場企業に所属する経営者層 |
| 有効回答数 | 769名 |
| 調査機関 | 2025年9月8日(月)~9月10日(水) |
| 調査方法 | インターネット |
経営者の約6割が「バックオフィスはコストセンター」と認識
調査によると、全体の約6割(58.9%)の経営者が、バックオフィスを「コストセンター」として捉えていることが判明しました。具体的には、「必要最低限の機能でよい(42.8%)」「優先度が低く最低限のコストで賄っている(16.1%)」という回答が過半数を占めています。
解説:Wewill 杉浦の視点
経営環境の変化が激しいスタートアップの初期において、プロダクト開発やセールスといった「攻め」の領域にリソースを集中させるのは、極めて合理的な判断です。だからこそ、バックオフィス業務を内部で抱え込むのではなく、変化に柔軟に対応できる信頼性の高い外部リソースを活用すべきです。
ただし、ここで重要なのは「単なる外注」で済ませないことです。ノウハウが集約され、属人化防止の仕組みを持ったプロフェッショナルなチームをパートナーに選ばなければ、本質的な課題解決にはなりません。 初期フェーズは「最低限の投資」で構いません。しかし、それが「投資」である以上、将来の統制構築コストの削減や拡大基盤の構築といったリターン(投資対効果)をシビアに意識すべきです。資金が貴重なスタートアップだからこそ、日々の業務の積み重ねを将来の資産となる体制構築につながる投資するという視点が必要です。

従業員が増加する「成長企業」ほど、バックオフィスに投資している
一方で、直近3年間で「従業員数が増加している企業」にデータを絞ると、景色が一変します。 成長企業の約6割(59.6%)が、バックオフィスに対して「成長を支える基盤として投資している」、あるいは「戦略的に投資している」と回答しました。
解説:Wewill 杉浦の視点
成長企業がバックオフィスにしっかりと投資している背景には、「分業」こそが組織成長の鍵であるという認識があります。企業は規模が大きくなるにつれて、業務の属人化を排し、分業体制へ移行することで成長の限界を突破できるからです。少し先の未来を見据え、この原則を理解している企業のほうが、成功確率が高いのはある意味当然と言えます。
そのためには、成長してから仕組みを作るのではなく、将来を見据えて「最低限の統制」や「システム化」を初期から実装しておくべきです。 会計・労務システム、銀行口座、チャットツール、コミュニケーションツールに至るまで、初期に導入したものを成長に合わせて「育てていく」という視点が求められます。初期フェーズで安く構築し、そのあと成長とともに上位バージョンに移行することでIPO対応できるという、奥行きのあるソリューションを選定することがとても重要です。そうしてすでに検証された仕組みを初期段階を作っておくことが、急成長にも耐えうる強固な基盤となります。

なぜ「わかっていても投資できない」のか? 成長を阻む「3割の壁」の正体
調査では、経営者の本音と実態のギャップも明らかになりました。 「バックオフィス体制の整備が事業成長に寄与する」と考える経営者は過半数(52.6%)に上ります。しかし、実際に十分な投資コストを割いている企業は、全体の約3割(33.2%)にとどまりました。 また、現場の課題として「業務の非効率(40.5%)」や「業務の属人化(32.9%)」、「専門性の不足(32.4%)」が多く挙げられています。
解説:Wewill 杉浦の視点
「重要性はわかっているけれど、手が回らない」。多くの起業家が抱えるこの葛藤はよく分かります。しかし、スタートアップ経営の本質が、本業という最大の「不確実性」を制御することにあるとすれば、バックオフィスのような「再現性のある領域」については、徹底的に検証された「型」を取り入れてしまうのが近道です。もっといえばそれ以外は不合理にすら思えます。
本来、「お金と人の統制」はショートレビュー前に慌てて整えるものではなく、日常業務の延長線上で自然と構築されているべきものです。質の高い外部リソースとうまく連携できれば、日々の事務コスト自体を将来への投資に変えることが可能です。 「バックオフィスは後でいい」「目の前のトラクションがすべて」といった、いまだスタートアップ業界に根付くマッチョで古い価値観からくる声をよく耳にします。必要最低限かつ投資対効果の高いバックオフィスを構築することは「トラクション命」と一切コンフリクトしません。それどころか、「トラクション命」だからこそ、バックオフィスは人力含めて証明されたソリューションを使ったほうが合理的だと思います。近年テクノロジーも、法律も、商習慣も、人口動態も激しく変わります。そういった社会背景を考えたら、バックオフィスの不確実性をスタートアップが自社内に抱え込むことは合理的選択とは思えません。現代のスタートアップにとって、成功確率を少しでも高めるために、信頼できる外部リソースを活用することはひとつの選択ではないでしょうか。

バックオフィスを「成長のエンジンへ
今回の調査結果は、バックオフィスが単なる事務処理機能ではなく、企業の成長を左右する重要な基盤であることを示唆しています。 コストセンターからの脱却を目指し、効率化や専門性の強化を進めること。それが、スタートアップが次の成長フェーズへ進むための第一歩です。
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「コストセンターからの脱却を目指し…次の成長フェーズへ進むための第一歩です。
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